Hollywoodに行こうよ!

Hollywoodに行こうよ!

Hollywoodのことは知っていた。パタヤのことを調べていれば目に入るし、バーの女の子をペイバーして一緒にHollywoodに行って楽しむ人達が大勢いることも知っていた。だがこの歳でディスコは無いでしょ、と思って興味も無かったが、onにHollywoodに行こうと言われて急に興味が湧く。いい機会なので一度ぐらい行ってみようかと思い始める。

「ねぇ、ハリウッド行こうよ笑」

「ハリウッド⁉︎なんで?」

「このコが行きたいって言うから笑」

「スレまくってんなぁ。このコで大丈夫?笑」

「わからん笑。けど一回行ってみない?」

「まあいいけど」

「おまえのレディーを探しに一緒に行くって言ってるよ笑」

「マジで?でもオレもう選べねえよ。。」

「せっかく行くんだから誰か探して行こうよ」

「うむ。。」

「まあ、とりあえずここは出ようか」

「わかった」

onに、ここを出て他のバーにレディーを探しに行くぞ!と伝える。

「ペイバー?」

「そう」

「オーケー。待って。」

onがそばにいたママに声を掛けてペイバーの旨を伝えると私の所にやってきた。

「彼女をペイバーする?」

「いくら?」

「ショートタイム?」

「ロングタイム」

「6,000パーツ」

「は?高っ!」

「ペイバー代1,500、ロングタイムは彼女に4,500」

これまでの経験からロングなら全部で5,000だという気持ちでいたので、突然の6,000提示に言葉を失う。ママがonと何かを話し終わると5,700でいいと言った。それでも高い。

「なんでそんなに高いの?いつもペイバー代1,000にチップが4,000だよ?」

そう言うと、なんだか理由を説明していたが英語がよく分からず理解できない。と言うよりどんな理由だろうとこの値段でペイバーをすることはない。

「ペイバーやめる。on、ごめんね」

謝ってペイバーを諦めると、

「わかった。5,200でオッケー。バーに1,000、彼女に4,200」

一気に値段が下がった。この値段なら普段とそう変わらない。だが最初に高額の料金を提示されてなんだかテンションが下がってしまう。もう無理に彼女をペイバーしなくてもいい。そんな気分になったが、ここまで値段が下がって断る理由が見つからず、ママにオッケーを出す。ペイバー代だけを払い、残りは彼女に払うと言って商談成立。支払いを済ませ、onが着替えから戻るとバーを出て次に向かった。

バーを出るとonは私の隣りに来て腕を組んだ。値段のことで少々テンションが下がっていたが、彼女のこのサービスで一瞬にして気分が良くなる。

「どこ行く?」

「オレ今日はもう独りでいいよ。たぶん選べないよ」

「なんでよ、ハリウッド行くでしょ?」

「オレ女の子無しでいいよ。3人で行こうよ」

「それつまんなくない?」

「じゃあパレスだけ行ってダメならいいや」

「わかった。じゃパレス行こう」

パレスにはTがいたが、友達のJと一緒に昨日からブリラムに帰っているはずだ。onと腕を組みながらパレスに入った。中に入るとすぐに弟の処女スタッフに見つかり、彼女に席を案内される。彼女は私が女の子を連れてきたことには何も触れずにオーダーを受けてドリンクを取りに行った。

「パレスに来たことはある?」

「ない。お客さんがいっぱいだね」

「いつもいっぱいいるよ」

客の数が多いうえに、ここはアイアンクラブより狭いので尚のこと賑わっているように感じる。ドリンクが来たので乾杯し、弟好みの女の子が居ないものかと探してみる。当の弟はまたもや、私にドリンクを出せ!と言うスタッフを前にダンマリを決めこんでいる。

自分が選ぶならあのコだけど弟ならこのコかな、などと想像しながら弟に勧めてみるがどのコもいまいちのようだ。この様子だとここでは見つからないだろう。自分もそうだが、好みの相手が見つかるときは入店後すぐに目につくことが多い。探しに探してようやくこのコを見つけましたという様なことはこれまでの経験では無かった。

しばらくして、トイレに行こうと席を立つ。自分の席からは見えない所に可愛いコが潜んでいるかもしれないと、周りを見ながら向かう。人混みを掻き分けて進みトイレのある一番奥の席まで辿り着くと、そこに知った顔が座っていた。すぐにTだと分かった。私服姿で化粧品らしきものが入った大きな袋を抱えて座っていた。隣りに客が付いている様子もなく独りだ。どんな状況なのだろう。そもそもブリラムに帰ってるはずなのになぜいる?彼女も私を見ていたようですぐに目が合う。一瞬動揺したが平静を装う。

「T、何してるの⁉︎ブリラムは?」

そう話掛けると、Tはそれには答えずしかめ面をしてプィと横を向いてしまった。私がレディーを連れてここに来ているのを知っていたようだ。私はなんの言い訳も出来ず、出来たとしてもTに一生懸命に言い訳をするような関係でもないと考え、それ以上は声を掛けずに立ち去りトイレに入った。

トイレから戻って自分の席につく。Tにそっぽを向かれたことで気持ちが少し沈む。せっかくお土産まで買って渡した相手に嫌われてしまった。だか仕方がない。残念に思いながらも気を取り直すが、Tがいると思うとなんだか落ち着かない。

「Tがいたよ。onといるのバレてた。。」

「ブリラム帰ったんじないの?笑」

「そう言ってたのに居た。。」

「他所の女連れ込んじゃってゲス野郎だな笑。Tが可哀想」

「おまえに言われたくない。。」

「T、怒ってた?」

「無視された笑」

「あーあ。お土産無駄だったね笑」

「ホントそう笑」

「じゃあ、もう出ようか。気に入ったの見つからないし」

「そうなの?じゃ次行くか」

「今日はもういいよ。見つかる気がしない。プレッシャーに潰された笑」

「あ、そう。。」

「3人で別にいいでしょ?ハリウッド行くの」

「まあいいけど」

「じゃあもう行くべ」

「わかった」

スタッフにチェックビンを伝えて支払いをする。Tには挨拶をせずにそのまま店を出ることにした。Tには明日ラインでもしてみよう。そう思いながらウォーキングストリートを抜けてHollywoodに向かった。

ソンテウをチャーターしてHollywoodに到着する。初めてなので入場の仕方がわからない。全てをonに任せて言われた通りにする。ウィスキーのボトルが入場料代わりになるのか、入り口でウィスキーを選んで中に入る。一気に大音量の音楽とレーザー照明に包まれる。正面の大きなステージ上ではDJなのかダンサーなのかバンドなのか、歌って踊っていた。ディスコというよりライブやコンサートのような雰囲気だ。ステージから離れた左端のテーブルに案内されると、少しして氷や割りもののコーラが届いた。onが手際良く3人分のグラスに氷とウィスキー、コーラを入れる。全ての用意ができたところで3人で乾杯。

改めて周りの様子を見る。我々と同年代のオヤジもちらほらと見受けられるがやはり大半は若者達で、広く大きなフロアーが彼ら彼女らで埋め尽くされていた。いくらパタヤとはいえ、これだけ若者に囲まれるとやはり場違いな気がしてくる。ディスコに来てぼーっと立っているのも情けないが、かといって踊るのも恥ずかしい。そんな微妙な心境でゆらゆら揺れていると、onがジャンケンをしようと言う。負けたら飲むやつだ。少し飲んで酔っ払ったほうがいいかもしれんと思い、ジャンケンを始めた。ジャンケンに負けてはウィスキーコークを飲み、少し踊ってはまたジャンケンをする。酔ってくると先程までの照れも無くなり踊って騒いでいるのが楽しくなってきた。そのうちonも酔ってきたのかウィスキーをボトルから直接飲み始め、また自分が飲んだら次はあなたでしょ!と口移しでウィスキーを私に飲ませる。そんな事を繰り返しながらオヤジなりのHollywoodを楽しんだ。

深夜の2時を過ぎた頃、そろそろホテルに帰ろうとHollywoodを出る。再びソンテウをチャーターして乗り込み、ホテルに向かう。onは酔っ払ったようで私にしな垂れかかって寝ている。私より酒に強い弟も普段飲み慣れないウィスキーを飲んでだいぶ酔っ払ったようだ。当然私もなかなかの酔っ払いである。明日は6時にタクシーが迎えにくる。ホテルに帰ってシャワーを浴びたらもう2時間ぐらいしか眠れない。今日はそのまま寝てしまおうか、onを相手にもうひと頑張りするべきか、悩ましいところだ。ジャンケンで負けて飲まされ、onに口移しで散々飲まされ、これってオレを弱らせてアレを回避するonの罠かもしれないな、などとあらぬ疑惑を浮かべつつ、そういう目論みだったのなら残念だったなonよ、このオヤジはまだヤレるぞと、勝手な想像に対抗心を燃やして対戦を決意する。一方、もう1人のオヤジも酔っ払いのくせに元気なようだった。

「小リスちゃんからラインが来た」

「なんて?」

「どこにいる?って聞くから、これから独りでホテルに帰るって送ったら、仕事が終わったからホテルに来るって笑」

「で、呼んだの?」

「呼んだ笑」

「マジで?おまえ元気だな笑」

「onと楽しそうにしてるの見せつけられてムラムラしちゃったから笑」

「最初から小リス連れて行けば良かったね」

「まあ、店に居たかどうか分からないし、もうペイバー代は要らないって言うからラッキーでしょ笑」

そう言って、ホテルに着くと意気揚々と部屋に戻っていった。

onと部屋に戻ると、早速シャワーを浴びるように彼女に言う。先に私が浴びると待っている間に眠ってしまいそうな気がした。朝起きてすぐにチェックアウト出来るように最低限のものを残して荷物をリュックに仕舞う。そのうちにonが出てきたので交代でシャワーを浴び、彼女が寝ているベッドに潜り込んだ。

それが彼女のスタンダードなのか、それとも酔っ払って動けなかったのか、onマグロを相手に奮闘する結果となった。それでもオヤジの意地を見せフィニッシュに至った。

5時半にセットしていたアラームに起こされて帰り支度を済ます。まだ寝ているonを起こして急いで支度をさせる。約束の4200Bを彼女に渡すと寝ぼけた顔で確認もせずにバッグにしまった。onと2人でロビーまで降り、ホテルの外に出ると、あっちでモトバイを探すと言って手を振ってセカンドロードの方へ歩いて行った。しばらく彼女の後ろ姿を見ていたが振り返る様子もないので、私もロビーに戻ってチェックアウトをすることにした。

弟がロビーに降りて来るのと同時にタクシーも到着。チェックアウトを済ませてタクシーに乗り込み、ドンムアン空港へ向けて出発した。

「あれ?そういえば小リスちゃんは?」

「それがさー、シャワー浴びて待ってるうちに眠っちゃってさー、悪いことしちゃった笑」

「ん?小リスちゃん来たの?」

「ホテルまで来たみたい。ホテル着いたってライン入ってるし、着信すげー入ってるし。全然気付かなくて、朝起きてライン見たらそうなってた笑」

「うわっ、可哀想。。」

「そう、可哀想でしょ俺笑」

「おまえじゃない。小リスちゃん」

「小リスちゃんも可哀想だけど俺も可哀想。ラストナイトひとりぼっちだった笑」

「それはおまえのせいだろ」

「まあ、そうだけど笑」

「ちゃんと小リスちゃんにごめんなさいって送っとけよ」

「今からラインする笑」

「相変わらずタイ人に雑だよね」

「わざとじゃないから仕方ない。。」

弟はそう言うとラインを開いてクマが頷いているようなスタンプを1つ送信し、目を閉じて眠ってしまった。これで謝ったことになるのだろうか。

高速道路を走るタクシーの窓から景色を眺めて思う。指折り数えていた今回のパタヤ旅行もあっという間に終わってしまい、次のパタヤまでまた最初から指折り数えなければならない。なんだか果てしなく長い道のりのように感じる。

撮った写真を見ながら楽しかった3日間を振り返っているとTのことを思い出した。今になってTともう少し話をすればよかったかなと後悔する。

『今から日本に帰る。またパタヤに戻ってくる。』

Tにそうラインを送り、私も眠ることにした。

(終わり)