セーラー服と水鉄砲!

セーラー服と水鉄砲!

店内に入ると特に席を案内されることもなく、空いている席に座った。ビールをオーダーして周りを見渡す。ここは我々が初めてゴーゴーバーを体験した所であり、初の相手となったBやNの印象が強すぎて、他の女の子達を落ち着いて見たことが無かった。ゆっくり見ると可愛いコが数人いる。なかなかの粒ぞろいだ。

2人で弟の相手を探していると、店長なのかマネージャーなのか、それらしい男性が丁寧な日本語で挨拶をしてきた。

タイ人の兄ちゃんは日本語が堪能で、我々にパタヤにはよく来るのか、だとか、あのコは日本語が少し出来るだとか、優しいだとか、色々と話掛けてくる。親切心もあって話をしてくるのかもしれないが、少し鬱陶しい。女の子は自分で判断して選びたいので余計な情報は要らないし、なにより、私は日本人をよくわかってますオーラが出ていて気に入らない。そんな事を思いながら黙って話を聞いていると、

「ドリンク1杯よろしいですか?」

と言う。

「あ、どうぞ」

弟が即答した。

…えーーー!!!  そこは飲ますんかい!…

ここで飲ませるならさっきスタッフに1杯出したほうが良かったのではないの?それとも何かい?日本語で言われると断れないのかい?などと思いながらも黙って見守る。

ボーっと女の子達を眺めていると、今までどこにいたのだろう、劇的に可愛い女の子を発見する。弟も同時に発見したようだ。

「ねえ、すげー可愛いくない?」

「可愛い!」

「呼んでみれば?」

それを聞いていた兄ちゃんが

「彼女は可愛いね。入ったばかりで英語も日本語も話せないけど呼んでみますか?」

と言う。

…ほら、そんな事を聞くと二の足を踏むだろ!…

とはいえ、このまま見過ごすのは勿体ない逸材。ほっそりしていて色白。可愛い系タイプ。今日の相手が決まってなければ私なら飛びつくところだが、弟はどうするのだろう。

しばらく彼女の動向を眺めながら悩んでいたようだったが、いよいよ彼女を呼ぶ決心をし、彼女を連れて来てもらうよう兄ちゃんに頼んでいる。

タイ語しか喋れないとはいえ、もし彼女と弟のフィーリングが合って連れ出すような事になったら私は弟に嫉妬するかもしれない。そう思わせるほど彼女は可愛いかった。そんな事を思いながら彼女が来るのを待った。部外者である私も妙に緊張する。

彼女がやってきて弟の隣りに座った。呼ばれて喜んでいる様子もないが嫌そうな様子でもない。無表情で感情が読めない。これは手強いな。そう感じた。ジロジロと様子を見ていては弟もやりづらかろうと、興味のないふりをして正面を向く。昔FM TOKYOで”ちょっと聞き耳を立ててみましょう”みたいなことを言う番組があったが、まさにそれで、どんな会話をするのか聞くために耳をすませる。

「こんにちは」

「こんにちは」

「元気?」

「Ka」

「・・・」

「・・・」

「名前は何て言うの?」

「○○」

「・・・」

「・・・」

「何歳?」

「21歳」

「・・・」

「・・・」

無言が続いてキンキンに冷えた空気が流れているのが分かる。少し笑ってしまう。

「ねえ!ちょっと!助けて!」

…早っ!…

弟が私に声を掛けてきたが、そんな冷たい空気の中に入りたくないし、私だってタイ語が話せる訳じゃない。

「なに?」

「ちょっと助けてよ、俺無理だー!」

「オレも無理笑」

「えー!俺どうしたらいい?」

「知らん笑」

いつの間にか先ほどの兄ちゃんは居なくなっている。役に立たないヤツだ。

仕方ないなと思い、少し彼女に話掛けてみる。

「カンパーイ!」

「・・・」

「Do you like Japanese?」

「・・・」

…あ、英語ダメなんだった…

「私は日本人です。日本人は好き?」

「知らない」

「・・・」

「・・・」

「あなたはなに人ですか?」

「・・・」

冗談で聞いたのだが、通じなかったのか意味がわからなかったのか、無言。

「出身はどこ?」

「○○○」

「知らない」

「・・・」

「・・・」

すぐに無言地獄に陥ってしまう。

「ごめん、オレも無理笑」

「えー!どうする?どうしたらいい?」

「どうする?って知らんよ。頑張れ笑」

「いや、もう無理」

「じゃあ、ありがとうって言ってお引取り願いなさい笑」

「え、そうなの?ありがとうって言えばいいの?」

「知らんけど笑」

「えー!ホント?大丈夫?」

「なに大丈夫?だよ笑」

弟が彼女にありがとうと言って軽くグラスを合わせると、彼女も察したようでサッと席を立ち離れていった。彼女も居づらかったに違いない。

「いやマジ疲れた。怖かったー!」

「手強かったな笑」

「もう女の子呼べない病になったぞ笑」

「いきなり呼ぶのは怖いね、相手の様子が分かんないから」

あの可愛いコをどうにも出来ないのは悔しいが、あれでは楽しみが見出せない。二人してホッとひと息をついてビールを飲む。少し休憩のつもりでボーッとしていると私の真正面に座っている女の子が私に向かって笑いかけている。何だ?私の顔にハナクソでも付いているのかい?などと思いながら笑顔を返すと彼女は小さく手を振ってきた。前田敦子似の可愛い女の子だった。いや、前田敦子が可愛いと感じたことは無かったが、もし前田敦子が私に手を振ったらすこぶる可愛く感じるに違いない。いま私に手を振っている前田敦子がだんだんと可愛く見えてくる。

「ねえ、あっちゃん呼んでいい?」

「ん?何の話?」

「だから、あっちゃんを呼んでいい?」

「あっちゃんて誰だよ?」

弟は周りを見て気づいたようだ。

「あっちゃんて前田のあっちゃん?」

「そう笑」

「似てるー!笑」

「ちょっと呼んでいい?さっきからオレに手を振ってくるから好きになっちゃった笑」

「また惚れたか⁉︎ てかあのコお客さん付いてるじゃん」

「・・・あれ?ホントだ」

さっきは居なかったような気がしたが、トイレにでも行っていたのだろうか、彼女の隣りに中国人らしきオジサンが座っている。よく見るとドリンクも出ている。お客が居るのに私にちょっかいを出してくるのはどういうことだろうか?そっちのオジサンよりこっちのオジサンがいいってことなのか。ますます可愛く見えてくる。中国オジサンはあっちゃんと話をするわけでもなく黙って座っている。その隣りで変わらず私にアピールしてくるあっちゃん。以前Dと出会った時もそうだったが、この略奪愛パターンが堪らなく楽しい。調子に乗ってコソコソと相手をしていると、彼女もエスカレートしてきたようで、そっちに行っていいか?というようなゼスチャーをしだした。おいおい、それは待て。お客さんがいるだろうに。そう思って待ての合図を送る。お客が居ても他の客に付いていいのだろうか。しかもこんな目の前にいる客に。もしかして最初は客だったがもうリリースされた状態なのだろうか。いづれにせよ状況が分からないので待てとなだめる。

あっちゃんとの略奪愛を楽しんでいると、弟の隣りに女の子が突然座ってきた。見ると私も気になっていた女の子で、スリムで可愛らしく、小リスみたいな愛嬌のあるコだった。

「あれ?どうしたの、このコ?」

「呼んだ笑」

「え?いつの間に?笑」

「他人の女に手を出してる間に笑」

「そうなの?全然気づかなかった。もう女の子呼べない病じゃなかったか?笑」

「治った」

そう言って、小リスちゃんと楽しげに話し始める。

さて、弟の相手が見つかり一人取り残されると寂しいもので、いよいよあっちゃんを略奪してしまおうかという気にもなってくる。中国オジサンはまだ彼女の隣りで黙ってビールを飲んでいるが、どういう状況なのだろう。彼女の立場からすると、もうこの中国オジサンからは何も期待できないと踏んで、次の客に今のうちからツバをつけておこうという事か。見ると私の他にフリー客がいないし、賢いやり方だ。もしかしたら計算あっちゃんなのかもしれない。そうは思っても、もうあっちゃんが気になって仕方ない。一人でボーッとしていてもつまらない。彼女がこっちに来たいというならと、合図に頷くことにした。

驚いたことに私が彼女に頷くと、すぐさま私のところに来て太腿に跨ってきた。

「おい!お客さんがいるんでしょ⁉︎」

「大丈夫!」

どういう理由で大丈夫なのか詳しく聞いてみたいが言葉がわからない。まあ彼女がそういうのだから問題はないのだろう。だが今まで自分に付いていたレディーが目の前で他の男に跨っているのを見るのはいい気がしないだろう。そう思ってこちらが恐縮する。それにしてもこの体勢、まるでオッパイパブだ。そのうち深く股間の上に跨ってくるので自然と手が彼女のお尻にまわる。小ぶりでハリのあるお尻だ。プリプリ、スベスベで触っていて気持ちがいい。心地よい感触を味わっているとソンがムクムクと起き出してくる。それに気づいたのかどうなのか、彼女は丈の短いセーラー服をたくし上げてオッパイも触れと言う。こちらも小ぶりだが形が良い。遠慮なく揉ませて頂く。

「何歳?」

「21」

なるほど若いだけあってオッパイにもハリがある。

「若いね。オッパイがキレイ」

そう言うと嬉しそうに笑ってキスをしてきた。

あー、もう堪らん。ソンももしかしたら涙を流しているかもしれない。

しばらくしてふと気づくと、いつの間にか中国オジサンは居なくなっていた。弟の様子を見てみると楽しそうにしている。

「どう?どんな感じ?」

「俺、今日はこのコと帰っていい?」

「あ、そんな感じ?いいと思うよ」

「じゃあ、そうするわ。そっちは?」

「んー、悩み中 笑」

そもそもDとの約束があるので一緒に飲むだけにするつもりでいた。しかし彼女の素晴らしいサービスを受けるうちに一緒に帰りたくなってしまった。Dに断りを入れてこのままあっちゃんと帰ろうかと悩む。

「なに?」

弟と話をしているのを見ていた彼女が尋ねる。

「私だけチェックビンする。」

「なんで?私も一緒に帰りたい!」

「友達と約束があるから」

「レディーがいるんでしょ!」

「違う。友達。明日また来るね」

「ホント?約束ね!」

「OK!約束!」

彼女は素直に了承してくれた。

悩みはしたが、Dはやはりお気に入りのコである。今後もあるので約束は反故にしたくないと思った。あっちゃんには明日また会いに来ればいいと思い、チェックビンをすることにした。

「ねえ、オレちょっとハッピーに行ってママを連れてくるから、このままここで飲んでれば?」

「そうなの?あっちゃんやめたの?」

「とりあえず今日はママにする」

「わかった。じゃあ俺ここで待ってればいい?」

「ハッピーを出る時にラインするからこの店の前で合流しようよ」

「了解。わかった。」

「じゃ、とりあえず行ってくるんで宜しく」

「オッケー」

伝票が一緒だったので弟に建て替えを頼み、あっちゃんに200Bのチップを渡してGINZAを出た。通りはまだまだ賑やかで、人ごみの隙間を縫って歩く。こうして独りでウォーキングストリートを歩くのは初めてだった。Dはちゃんと待っているのだろうか。一瞬前にはあっちゃんと天秤に掛けていたくせに、独りになったせいかDに早く会いたくなる。

知らずと足早になってHAPPYに向かった。

(次回に続く)