ゴーゴー嬢にお土産をあげよう!

ゴーゴー嬢にお土産をあげよう!

前回からおよそ2ヶ月。我々は三たびパタヤにやってきた。エアアジアの夜便を利用してドンムアン空港に到着したのは深夜。初のバンコクで夜を明かし、翌日エカマイからバスに乗って、ようやくパタヤに辿り着いた。今回のホテルはフリッパーハウスホテル。パタヤのバスターミナルからソンテウに乗り、ビーチロードのSoi 7で降りる。バービアが左右にずらりと並ぶSoi 7を歩く。まだ明るい時間で閑散としているが夜は賑わいそうだな、と思いながら進んで行くと、バービア群を抜けた先の右手にホテルを見つけた。

チェックインを済ませて各自部屋に入る。入ってすぐに、部屋の広さも雰囲気もこれまで泊まったヴィスタやベイウォークのほうが良かった、と思う。まあ一泊3千円代という安さに惹かれて選んだホテルだから仕方がないのだが、バルコニーも無くてタバコが吸えないのはどうにも不便でならない。部屋で過ごすのがあまり快適に感じられない。そう感じながらもしばらく時間を潰す。

日が沈みかけた頃、そろそろ出掛けようと弟を誘って外出の準備をする。リュックの中からベビースターラーメンを取りだし、成田空港で買った東京ばな奈を入れた袋に一緒に詰め込む。どちらもTに渡そうと買って来たものだ。

お土産を持ってホテルを出ると先程まで閑散としていたSoi7にはバービアの女の子達が立ち始めて賑やかな通りに変わっていた。代わるがわる女の子に声を掛けられ、腕を掴まれる。彼女達をかわして通りを抜ける頃には、オレはタイではモテるのかもしれない。と思い始める。名残惜しくて振り返ると、後ろを歩いていた小太り爺さんにも同じ事をしている彼女達がいた。

…誰でもかよ!…

分かってはいたけど、一応確認をして我に帰る。

ビーチロードに出てソンテウでウォーキングストリートに向かった。バーのオープンまで少し余裕があるので”Beer Garden”で食事をすることにする。

店内に入っていつも通りの海際の席に座る。半年振りに来てみたが、やっぱりここは気持ちがいい。早速ビールで乾杯をした。

「で、今日はどうするの?」

「わからん。適当に探す。」

「とりあえずパレスに行ってもいい?お土産渡したいから」

「いきなりパレス? 今日はそのままTにするの?」

「いや、しない」

「しないの?お土産買ってきたのに?」

「うん、今日は渡すだけ」

「なにそれ?無駄じゃね?」

「別に無駄じゃないでしょ。ご挨拶の手土産だろ。」

「そんなのいらんわ」

「いるよ!頼まれたし。T、喜ぶかな?」

「菓子ごときで喜ぶわけないじゃん笑」

「そうなの?頼んだもの買ってきてくれるんだよ?嬉しいでしょ。」

「そんなの貰ったところで、だろ笑。喜んで欲しいならバックとか時計とか買えよ」

「お前は心が腐ってるな笑」

「いや、ほんとそうだから笑」

「ところでさ、パレスのスタッフはどうするの?」

「どうするって?」

「もう呼ばないの?」

「呼ばない」

「でた。処女だけ奪ってポイですか」

「処女じゃねーし」

「呼ばないのにパレス行って大丈夫?」

「別に大丈夫でしょ。自分だって今日はTじゃないんでしょ?」

「まあ、そうだけど」

「てか、今日Tにしないで誰にするの?まさかハッピーママにする気?」

「そうですけど何か?笑」

「またかよ、もういいよママは」

「なんでよ?」

「もう飽きた」

「お前が飽きるな笑 オレまだ飽きてないから」

「おっぱい拭くのにか?笑」

「いつか拭かなくなる時がくるかもしれん」

「いつかって、いつまで呼ぶ気だよ!ポーレーオだろ」

「仕方ない。可愛いんだもん」

TにもDにもパタヤに来ることはラインで知らせていた。まずはTに頼まれたお菓子を手土産に、飲みに行こうと思っている。今日ペイバーをすることはないけど、しないからってお土産を買わない道理はない。Tに渡して喜ぶ顔を見たい。そう考えていた。

Dには今日彼女のバーに行く事を伝えている。ペイバーをするつもりで行くが、はっきり言ってはいないので、待っていない事もあり得る。その時はまた考えればいいと計画を立てていた。

食事を済ませてBeer Gardenを出る。手土産を片手にウロウロと飲み歩くと、誰かに食べられないとも限らないし、酔って調子に乗って自らあげちゃうかもしれん。そう思って一番にPALACEに向かった。

店内に入って辺りを見回すと、すぐに弟のスタッフと目が合った。

「おー!元気?」

と彼女に声を掛けた。ハグでもしようと思った瞬間、私の後ろにいた弟を見つけたようだった。

「ノリー!!」

すごい喜びようで私を通過し、弟に飛びついて行った。

…オレは無視かい!笑…

スタッフが弟の手を引いて席に案内する。そのままスタッフにビールをオーダーして席に座った。

「さすが処女を奪った男には歓迎がハンパないな笑」

「だから処女じゃないから!」

スタッフがオーダーのビールを取りに行ったので私は目的のTを探す。と、どこからともなくTが目の前に現れた。前回一緒に飲んだJも一緒だ。満席でスペースが無いなか、私の横を少し空けてなんとかTに座ってもらった。

「サバイディーマイ」

Tから話掛けてきた。ただの挨拶だが前回の事を思うと大きな進歩だ。

「元気だよ。Tは?」

「元気」

「J、元気?」

「元気!」

「今日はAはどこ?」

「知らない」

前回一緒に飲んだもう一人の友達のAは居ないようだ。

我々のビールを持って弟のスタッフが戻ってきたので、TとJにドリンクを勧めるとそれぞれ何かを注文した。

座る所が無いJは立ちながら私に色々話掛けてくる。少し慣れたとはいえ、Tはまだあまり話をしないので助かる。

「いつパタヤに来た?」

「今日来た」

「何日いるの?」

「3日間。日曜の朝に帰る」

「短いね」

「そう。休みが少ない。」

「私達は明日家に帰る」

「家?ブリラム?」

「そう」

TとJは故郷が一緒のようだ。昔からの友達でお互い一番の友達なのかもしれない。TのFacebookにはJも一緒に写っている事が多い。それにしても、私が来るのを知っていながら明日ブリラムに帰るとは随分と寂しいじゃないか。それより、Tは自分で頼んでいたお土産を受け取る気があったのだろうか。今日ここに私が持って来なければ渡せなかった事になる。頼んだ事など覚えて無いのだろうか。

彼女達のドリンクが届いたので乾杯し、改めてTに直接聞いてみる。

「T、明日ブリラムに帰るの?」

「そう」

「おー、なんで?キトゥーン!笑」

「嘘つき笑」

やはり帰るようだ。危うく渡せず終いになるところだったお土産を彼女に渡した。

「はい、これ」

「なに?」

「東京ばな奈」

「あー」

袋を広げてちらっと見るが、すぐ袋を閉じた。

…「あー」って、それだけかい⁈…

喜ぶ事もなく、頼んでいたのを忘れてた、という反応でもない。なんの感情もない「あー」にがっかりする。おいおい、せめて袋から出してみるぐらいはしてくれてもいいのでは?結局何の盛り上がりもなく、会話のネタになることさえもなく、お土産贈呈の儀式は終了した。弟の言うとおり、お菓子ごときでは彼女の喜びは得られないようだ。

そこに弟のスタッフが来て私に話掛けてきた。

「私にコーラいい?」

「え?なんでオレ?それは彼に聞きなさい」

そう言って隣りの弟を指指す。

「あなたの友達がダメだと言う!」

「えー⁈」

隣りの弟を見ると、私とスタッフのやり取りを聞いてニヤけている。

「おまえ、1杯ぐらい飲ませてやれよー」

「なんで?」

「さっきあんなに歓迎されてたじゃん。1杯ぐらい出してやれよ」

「意味がない」

「冷たっ!」

私がスタッフに、もう一度頼んでみろと言うと彼女は弟にもう一度頼んだ。弟が食い気味に答える。

「ダメ」

「オーイッ!!!」

彼女は再び私に言う。

「なんで友達はダメって言う⁈」

…そんな事オレに聞くなよ…

弟はこちらの会話を聞いてニヤついているが、素知らぬ顔だ。

仕方ない。オレが飲ませてあげよう。関係ない事でオレの前で騒がれても面倒だし、そもそも伝票は一緒だ。

「コーラでしょ?どうぞ」

そう彼女に伝えると、礼も言わずに自分でドリンクを取りに行った。弟を見ると無言で「えー!」と驚いている。

「えー!じゃねーだろ。オレを巻き込むなよ笑」

「知らないよ、勝手にそっち行くんだもん笑」

しばらく彼女達と飲んでいたが、これ以上TとJにドリンクを出すと、またスタッフに絡まれる事になりかねないので、そろそろ切り上げる事にした。

「T、今日は疲れたからホテルに帰るね」

「オッケー」

「また会いに来るね」

「オッケー」

信じたのか興味がないのか、素直に返事をする。助かるが少し寂しい。ペイバーを期待してなかったのだろうか。もしくはシャイなTはペイバーしてというような事を言えないのかもしれない。そんな事を考えながらチェックをして、T達に別れを告げた。

PALACE を出てスマホを見るとDからLineが届いていた。

『いまどこ?』

『おまえは私に会いたいか?』

今日来るのか来ないのか確認をしたいのだろうが、なんという上からの物言いなのだろう。今日会うことは出来ますか?とか、私はあなたを待ってます。とか、少しぐらい可愛いサービスをしてくれてもいいと思うが、そうはいかないらしい。まあ聞いてくるという事は、私が行くと言えば待っているのだろう。可愛い奴め。と良いように考えて返信をする。

『私はいつもあなたに会いたいぞ』

『だから今日あなたに会いに行く』

どうだ。これで満足だろ?上からの物言いにおとなしく従う。

『ok』

すぐに返事が来た。満足したようだった。

今日の相手がDに確定したことで、あとは弟の相手を探すだけとなる。

BACCARA に行ってみるも今ひとつらしく、次にGINZAに行ってみることにした。前回はNとBを避けていて、バーに入ることはなかったが、今日彼女達はバーの前で呼び込みをしていない。おそらく居ないのだろう。そう踏んで入店してた。

(次回に続く)