金払って恋したとかないわ きもい!

金払って恋したとかないわ きもい!

部屋に戻って二度寝をしようと試みたがうまく眠れず、朝食の時間が来たので一番乗りで朝食テラスに入る。ラインで弟を起こし強引に召集すると、眠そうな顔でテラスにやって来た。

「朝が早えーんだよ、ジジイ」

「いつまで寝てんだよ」

「まだ7時だぞ。どんだけ早えーんだよ…」

「7時って、日本じゃ10時だぞ。寝すぎだろ、せっかく来たのに」

「せっかくの休みだから寝たいんじゃん。起こすんじゃないよ」

「オレは朝5時から起きてて暇なの!」

「知らんわ」

いつもこうして早朝ミーティングが始まる。

「Lはどうだった?」

「可もなく不可もなく。普通」

「何時頃帰ったの?」

「6時頃帰ったよ。人が気持ちよく寝てるのに起こしやがって。勝手に帰ればいいのに」

「え、だってチップ渡してないんでしょ?そりゃ起こすでしょ」

「そうだけどさー、起こされるとイラッとすんだよねぇ」

「なにそれ、傲慢すぎるな」

「傲慢ていうな」

「ところで今日はどうする?今日、禁酒日だから夜行くとこないぞ。」

「ね、どうしよ」

「0時すぎればオープンするバーもあるっぽいけど」

「一応そのぐらいの時間に行ってみる?」

「ほんとはハッピーのママをさ、ラインで呼んで遊ぼうと思ってたのに、今日田舎に帰るんだって」

「危ねえ、俺一人になるところだったじゃん」

「まあ、結果ダメだったからいいじゃん笑」

「つうか、もうママは充分じゃね?2回も3回も同じ奴とか無いわ」

「いいじゃん、恋しちゃったんだから笑」

「金払って恋したとか、キモい」

「お前は心がないな。そういうところだよ」

「どういうところだよ」

とりあえず昼の観光先などの予定を決める。夜は成り行きで、ということで各自のんびりと過ごして出掛けることになった。

観光などを終わらせてホテルに戻り、しばしのんびりと過ごしていたが、日が暮れて夜の時間になるとジッとしていられなくなる。

弟にラインを送る。

『マッサージでも行く?』

『おけ』

『10分後に部屋に行く』

『おけ』

弟の部屋で合流し、昨夜行ったマッサージ店に行くことにした。

昨日はDと二人でオイルマッサージを受けたが今日はフットマッサージを選択。1時間後、施術が終わって会計をする。昨日指摘されたチップを払わねばと思い出し、100Bをマッサージ師のおばさんに渡して店を出た。

すぐ近くにワットチャイモンコンという寺院があるのをネットで知り、そこまで足を伸ばしてみる。寺院の中に入るとたくさんの屋台が敷地内に連なっていた。参拝に来ている地元タイ人と、おそらく我々と同様に暇を持て余した外国人で、思いのほか賑わっていた。参拝の様子を一通り見たあと、連なる屋台をひやかし程度に眺めて寺院を出る。

真摯に参拝するタイの人々の姿を目にしたからか、仏様が我々の淫らな気持ちを浄化してくれたのか、もう今日はホテルでゆっくりしようということになった。

ホテルの部屋に戻り、一人静かな時間を過ごす。いつの間にか眠っていたようで、ふと目を覚ます。時間を見るともう0時をまわっていた。タバコを吸いにバルコニーに出ると、どこかで花火を打ち上げているのが見えた。

翌朝、早々に目が覚める。時間はまだ6時前で朝メシもオープンしていない。もう眠れそうも無いのでタバコを吸ったりシャワーを浴びてみたり、あげく早朝のパタヤをうろついてみたり。なんとか7時まで時間を潰し、待望の朝食へ。弟にラインをしまくり今日も強制招集すると、眠そうな顔でやってきた。

「だから毎朝早えーんだって」

「いいじゃん、昨日は早く寝たんだし」

「起こすんじゃないよ、毎回毎回」

「しょーがないじゃん。オレは5時から起きてて暇なんだよ」

「寝ろよ」

「眠れない。むしろ一睡もしてない」

「いや、寝てるだろ」

いつものようにこうしてミーティングが始まった。

さて、今日はいよいよ最終日である。夜のお相手選びに失敗は許されない。とはいえこんな事をいくら検討しても出会ってみないとわからないわけで、これぞ!という相手を見つけるまではバーをハシゴして周るしかない。今日はまだ行ったことのないバーも周ってみようということで解散した。

ビーチロード沿いにあったタイ料理屋でこの旅最後の夕食を済ませ、頃合いをみてウォーキングストリートに向かった。

打ち合わせ通りIRON CLUB、SENSATIONS、SAPPHIRE CLUB、WHAT’S UP などこれまで覗いたことの無かったバーを中心に周る。ここでは選べないと分かると、ドリンクを飲み切らないうちにチェックをして次へ行く。ハイペースで数件のバーを周るも好みのコは見つからず、PALACEに入店してみる。ここも初めて入るバーだ。中に入ると、そう広くない店だが女の子の数が多い。ステージにもその周りにも所狭しと女の子が溢れている。入り口付近の席に案内されてドリンクをオーダーする。とりあえずステージを見渡すと、パッと見で何人か選べそうなコがいる。これは期待できるかもしれない。そう思いながらステージ上で躍る女の子達を隈なくチェックしていく。我々の席から離れた奥のステージにもたくさんの女の子がいるのだが遠くて様子が分からない。まあいい。ここで少し腰を据えて飲もう。そう考えながら届いたビールで乾杯をする。

しばらくして、奥のステージ上に気になるコを見つけた。遠くて見つけられなかったが、美人というのか可愛いというのかショートカットの女の子がゆらゆら踊っていた。彼女を確認するためにトイレへ行く体で奥ステージに近づいてみる。間違いない。可愛い。

トイレから席に戻って弟に告げる。

「いたいた!オレのかわい子ちゃんが笑」

「え、どこ?」

「奥のステージ。手前で踊ってるコ」

「あのショートカットのコ?」

「そう、あのコ。可愛いくない?スザンヌに似てない?」

「全然ザンヌさんじゃないけど、可愛いね」

「呼んでもいい?」

「うん、どうぞ、どうぞ笑」

彼女を席に呼ぶ事に決めたのだが、この距離と人混みではいつものアイコンタクトが効かない。どうしたものか。少し様子を見ていたが埒があかない。モタモタしてる間に他の客が呼ばないとは限らない。私は決心して彼女に直接声を掛ける事にした。奥のステージに行き、踊っている彼女に声を掛けた。

「あそこに座ってる。一緒に飲もう」

ゼスチャーでわかるように言うと、彼女も理解したようだった。恥ずかしいので急いで自分の席に戻る。

もう何度も女の子を呼んで飲んでいるが、こういう呼び方をしたことがなかったからか、少し緊張する。彼女はステージの上からスタッフに声を掛けて何かを話している。客に呼ばれたとでも言っているのだろう。すると今度はそのスタッフが私のところへ来て、お前は彼女を呼んだか?彼女で間違いないか?と彼女に緑のレーザーを当てて確認する。

…それ恥ずかしいからやめてくれ。。オレが彼女を選んだことが知れ渡るではないか…

そう思いながら頷くと、彼女にドリンクを、というので了承した。

間もなく彼女は友達らしき女の子を連れてやってきた。歓迎の意を大げさに表し、彼女の手を取って私の右隣りに座ってもらう。やはり近くで見ても可愛い。スザンヌ顔に気をとられていたがスタイルも抜群だった。細身だが痩せ過ぎてはなく、胸もお尻も大きい。これをダイナマイトボディーと言うのかもしれない。細身が好きなだけで、胸やお尻などはあまり気にしない私も、彼女のスタイルを見ると思わずむしゃぶりつきたくなる。

「私は彼女の友達。一緒にいい?」

ついてきた友達が私に聞く。友達は結構ですとも言えず、呼んだ彼女のためと思って了承する。左隣りを空けて座ってもらった。まずは私が呼んだショートカットのコに話掛けてみる。

「元気ですか?」

「はい」

「可愛いね。ここから見て、あなたが一番と思った」

「…」

「名前はなんていうの?」

彼女は小さな声で答えたが聞き取れなかった。

「え?なに?」

「…」

彼女は黙って俯いてしまった。

話が進まず沈黙する。気まずい空気が嫌で左の友達にも話掛けてみた。

「名前はなんていうの?」

「A。 あなたは?」

「ヨシ」

「ここは初めて?」

「パタヤのこと?それともパレス?」

「このバー」

「そう、初めて」

「仕事?休暇?」

「休暇」

「何日間?」

「5日間」

「短いね」

「日本人にとっては長いよ」

「そうなの?」

Aは接客に慣れているのだろう、積極的に話掛けてくる。だからこちらも話やすい。少し気持ちが持ち直したところで再び右のショートカット嬢に話掛ける。

「何歳?」

「22」

「若いね」

「…」

「出身はどこ?」

「ブリラム」

「ブリラムはどこ?ここから遠い?」

「…」

私の英語が通じないのか、また黙ってしまう。彼女は退屈そうにボーっと前を向いている。また沈黙が絶えられず、Aに救いを求めた。

「A、彼女は私が嫌いなのか⁈」

「大丈夫。彼女はシャイなだけ」

私達の様子を見ていたのだろう。彼女はそう答える。

「ホントに⁈」

「ホント」

「彼女の名前は何?」

「T」

「オッケー わかった」

Aがタイ語でTに何かを言っている。何と言っているのか分からないが、Tはバツが悪そうにAに答えている。私も諦めずに再度Tに話掛ける。

「Tぃー!大丈夫か?あなたは私が嫌いか?」

「… 」

努力も虚しく沈黙が続く。間が持たないのでドリンクをもう一杯勧めてみた。

「ドリンク飲む?」

「カー」

…あ、飲むのね笑…

隣りのAにもドリンクを勧める。いつの間に来たのか、我々のテーブルの前に、もう一人女の子が立っていた。彼女の友達だから一緒に飲みたいと言う。芋づる式に友達が増えても困るが、誰でもいいからこの沈黙地獄から救ってくれという思いで、友達にもドリンクを贈呈した。

弟の様子を見ると未だ一人で、おまえは一体何人の女にドリンクを出すつもりだ!という顔をしている。

新たな友達はJと言った。顔は好みではないが細身でスタイルが良い。Jも私に気さくに話掛けてくれ性格が良さそうだ。肝心なTだけがだんまりだ。

そこへテキーラ売りの女の子が廻ってきた。トレーの上にテキーラを沢山乗せ、客やそのレディーに一杯どうだと巡回している。どこのバーでも同じようにこのテキーラ巡回はあるようで、これまで何度となく断ってきた。自分にもレディーにも不要だと断れば、じゃあ私達に飲ませてくれと言うので鬱陶しくも思っていた。だが、今日は違った。このテキーラで流れが変わらないものかと思い、Tにテキーラを飲むかと聞いてみた。

「飲む」

…あ、飲むんだ笑…

彼女が飲むと言うならやぶさかではない。このテキーラ売りから買おうじゃないかと、TとAとJ、そして自分の分のテキーラをもらう。

こんな事をするとまた弟のブーイングを受けるのではと、こっそり横目で様子を探ると、弟側には我々のテーブル担当であろうスタッフの女の子と、ママらしきおばさんがガッツリ付いておりテキーラをたかられていた。観念してテキーラをもらっている。

人数分のテキーラをもらい、小さくて狭いテーブルに7杯のテキーラが並べられた。

(次回に続く)