ゴーゴー嬢はスキンケアが大事!

ゴーゴー嬢はスキンケアが大事!

彼女は一体どこから我々を監視していたのだろうか。しっかり店内を確認したつもりでいたが、それでも見つからないので戻ってみると、ちゃっかりと私の席に座っていた。”来るのが遅い”とか、”あなたを待ってた”とか、そんな一言があってもいいと思うが、黙ってニヤついているだけ。

「あれー?ママいつの間に来たの?お前が見つけて呼んだの?」

「いや。トイレに行ったら割とすぐ来たよ。勝手に来て座ってますけど笑」

「あ、そうなの?意外と図々しいな笑」

「じゃあ追い返せ笑」

「それはない笑」

些細なことだが、なんだか安心した。彼女はあまり多くを喋らないし感情を表にださない。なので彼女が私をどう思っているのかが分かりづらい。彼女の仕事だから私と付き合っているのは当然なのだが、そのなかでも、良い客と思われているのか、お金の為にかなり我慢をしているのか、やはり気になるところだ。だがこうして彼女の方から私のところに来るということは、嫌な客だとは思われていないということだろう。少なくとも、あの脂ギッシュよりは気に入られている。なにせ昨晩、おっぱいを拭かれた身としてはいろいろと不安になる。

「遅くなってごめんね」

「オッケー」

「彼がレディーを選べないから」

「昨日のレディーは?」

「知らない。彼はバタフライだから」

「あー」

男達はみな同じなのだろう。レディーを変えることなど普通のことで、気にすることのほどでもないようだ。

「私はDだけ笑」

「ははっ オーケー、オーケー」

はいはい、わかりました、と言われて流される。もし彼女からもっと私をその気にさせる言葉や態度があれば私は彼女にハマるかもしれない。だが、彼女には恋人モードの接客などする気もないようで、実にサバサバしている。

私がDと夢中になって話をしていると、いつの間にか弟の隣りに女の子が座っていた。彼女がドリンクをオーダーしている。

「あれ!いつの間に。誰?笑」

「知らない。強引に座られた」

弟の好みのタイプとは違うけど、彼女にドリンクを出すようだから満更でもないのだろう。

彼女はDのように水着を着ているわけではない。だからダンスはしないのだろう。ではスタッフ的な役割なのだろうか。だが同じ格好をした女の子が他にも大勢いるが、彼女達がオーダーを受けたりドリンクを運んだりはしていないようだ。彼女の立ち位置がわからない。ちょっと気になってDに聞いてみる。

「彼女はペイバーできるの?」

「知らない」

「知らない?なんで知らない?笑」

「ははっ」

知らないとはどういうことことなのだろうか。ペイバーを受けるかどうか、彼女の気持ちを知らないという意味か。それとも何も知らないのか。毎日ここで働いていて、知らないなんてことがあるのだろうか。謎が謎を呼んで余計にややこしい話になった。

まあ彼女のことはどうでもいい。私は話題を変えた。

「明日はお酒が飲めないの?」

「そう。今日のミッドナイトで飲めなくなる」

「明日はお休み?」

「ホームタウンに帰る」

「イサーン?」

「そう」

「イサーンのどこ?」

「コンケーン」

私はグーグルマップでコンケーンを検索して確認する。

「遠いね。いつパタヤに戻るの?」

「わからない」

「この仕事を辞めるの?」

「わからない。ははっ笑」

詳しく話しても通じないと思ってなのか、知らないとか分からないが多い。それともホントに分からないのだろうか。

「このバーは明日お休み?」

「知らない笑」

ほら、また知らない。

そんな話をしていると、弟が話し掛けてきた。

「ねえ、俺このコでいいや」

「そのコってペイバーできるの?スタッフじゃないの?」

「知らないけど、一緒にほてるぅ~って言ってるよ笑」

「そうなの?じゃあいいんじゃない笑」

「じゃ、ペイバーする。そっちは?」

「え、ペイバーするよ」

「え⁈おっぱい拭くのに⁈」

「今日は拭かないかもしれない笑」

「あーそう?笑」

「じゃあペイバーしてそろそろ行くべ」

「おけ」

そう話を決めてDに伝える。

「彼は彼女をペイバーする」

「オッケー」

…オッケーって、ペイバー出来るか知らなかったくせにリアクションそれだけ?…

「Dもペイバーね」

「オッケー」

ペイバーするよと言えばもっと喜んでくれるコがたくさんいそうな気がするが、Dは当然のように返事をする。オレはやっぱり何か間違ってるのではないだろうか。弟の彼女が喜んでいるのを横目に、バーのママにペイバー代を払う。

彼女達が着替えて戻ってきた。やっぱりDは私服を着ると清楚な若奥様に見える。やっぱり彼女をペイバーして良かったと早くも思う。

弟の彼女は名前をLといった。Lはバーを出るとマッサージに行こうと言う。ゴーゴー嬢とマッサージに行くなんて思いつきもしなかったが、これもいい思い出になるかと、4人でマッサージに行くことにした。

Lの案内でウォーキングストリートを出てすぐのマッサージ店に入る。以前に弟がIKKOさんに襲われた店のすぐそばだ。ガラス張りの店構えで店内が良く見える。中はふかふかの絨毯が敷かれ、フットマッサージ用に並べられている一人掛けソファは清潔で大きくて快適そうに見える。今まで我々が行っていたマッサージ店よりも高級そうな店だったが、値段を確認すると他と変わらぬ料金らしい。

Dはオイルマッサージがいいと言うので私とDはオイルマッサージを選び、弟たちはタイマッサージを選んで入店。私とDは2Fの個室に案内される。施術用のベッドが2台並んでいる。おばさんマッサージ師は私達に、服を脱いで待っていてと言って大きなタオルを渡して出て行った。オイルマッサージは初めてだったので、服を脱げと言われてもどこまで脱ぐのか分からずDの様子を見ると、彼女は迷いなく服を脱いでいる。間接照明の柔らかい光がDの綺麗な身体を照らす。腕で胸を軽く隠し、私を見ながらベッドに横になった。Dがちょっと恥ずかしそうに笑っていた。シーンとした個室に2人。目の前には薄暗い灯りに照らされた綺麗な女の裸。隠微な雰囲気だった。

…エロい!エロ過ぎる!!…

私もDにならって服を脱ぎ、全裸になる。いつの間にかソンがいきり勃っていた。慌ててタオルで隠す。

…ち、違うんだよDぃー!悪気はないんだよ!…

Dは何も言わずに私を見ている。まあこの場合悪気があってもいい関係なのだが、場違いはさすがに恥ずかしい。急いでタオルを腰に巻き、自分のベッドにうつ伏せに寝る。これで一安心。うつ伏せのままひと息つく。沈黙が続いたのでDの様子を見ると、まだこちらに顔を向けていた。目が合ったので何か言おうと考えていると、先にDが言った。

「…タルン」

…やっぱ見てたか…

…Dよ、これはアクシデントなのだ…

突然言われて返す言葉もなかった。

まもなくおばさんマッサージ師が二人、個室に戻ってきた。ようやく施術がはじまり私もDも目を閉じた。

施術が始まってしまえば個室であろうとDと一緒であろうとただマッサージを受けるだけである。初めてのオイルマッサージが気持ち良く、また酔いもあって深い眠りに落ちていたようだ。気づいた時には見事にキャメルクラッチをキメられていた。

マッサージが終わり、お金を払って外に出ると弟が尋ねてきた。

「ねえ、チップって払ってる?」

「チップ?払ったことないけど。」

「だよね。でも普通は払うっぽいよ。Lにチップを渡せって言われて、二人のおばさんに100B払ったよ」

「そうなの?Dは何にも言わないから払わないで出てきちゃった」

「払わず出ようとしたらLにすげぇ怒られた」

「そうなんだ。知らなかった。」

これまで何度かマッサージには行っていたが、チップを払うものとは思わなかった。決まった料金だけを払って店を出ていたが、もしチップが必要だったなら悪いことをしてしまった。

そんな話をしながら歩いてホテルに帰る。小腹が空いたので途中セブンイレブンに寄り、各々好きなものを物色。Dはウインナーとホットサンド、そして、セブンで見るたびに謎だと思っていた小瓶入りのエキスを私のカゴに入れる。コンドームはあるか?と聞くので、たくさん持ってる、と答えると薄笑い。手に持っていたハブラシとベビーパウダーを更にカゴに入れ、オッケーと言った。

ホテルに到着すると、そのまま私の部屋で軽く宴会。禁酒日のことがあったので買い置きしていたビールを皆で飲む。セブンで買ってきたつまみを広げて乾杯。Dがホットサンドを半分にして食べさせてくれる。思惑どおり、Dは昨日よりも随分と私に馴染んでいる。それに、今日はよく喋る。Lがよく喋るからなのか、二人が同じバーだからなのか、黙っている事が多かった昨夜とは大違いだ。中国人はどうだとか、韓国人はどうだとか、LとDで盛り上がっている。彼女達は日本人は優しいがスケベが多い。日本人は皆大人のオモチャを持ってくると言う。さすがに”皆んな”は大げさだろが、前回弟はNに、バイブを持ってるか聞かれたと言っていた。その話を聞いた時は、そんなの持ってるわけないじゃん、と思ったが、日本人カスタマーが多いNにとっては、皆持ってるのに無いの?ぐらいに思ったのかもしれない。

食べて飲んで満足したところでお開きにし、弟たちは部屋に戻って行った。残ったビールやお菓子などを片付け、少し酔っ払っていたのでベッドに横たわる。

「酔っ払った?」

「少し酔っ払い」

「シャワーに行ける?」

「オッケー」

先にシャワーを浴びて部屋に戻ると、セブンで買った例の謎のエキスをDから渡される。

「なに?」

「飲んで」

「なんで?」

「酔っ払い」

「いらない。大丈夫」

「ダメ、飲んで。これは身体にいい」

「ふーん。オッケー 飲んでみる。ありがとう」

そう言って謎エキスを飲んでみた。一気に一口で飲んだので何の味だか分からなかったが、美味しいものではなかった。おそらくDはこれを自分が飲むつもりで買ったのだろう。だが私が酔っ払いだと言ったから私に飲ませたのだと思う。彼女の気遣いがなんだか嬉しかった。お金を払って買ったのは私なのだが。

昨夜と同様にシャワーから出た彼女はバスタオルを巻いたまま、すぐにベッドに潜り込んだ。私もまた同様に軽くうがいををしてベッドに潜り込む。寄り添うと彼女の香りが疲れを癒してくれるようで、今日はもうこのままでいいと思いながらいつの間にか眠りについた。

ソンに起こされて目が覚める。今日もソンは早朝が元気なようで、スマホの時間を見るとまだ5時だった。隣りのDは私に背中を向けて眠っている。6時には帰るつもりだろうから丁度いいかもしれない。私はDの背中に寄り添い、モゾモゾと彼女にちょっかいを出す。彼女はすぐに目を覚まし、眠そうな目で自分のスマホを探し時間を確認する。彼女も丁度良い時間だと思ったか、観念したのか、私の方に向き直り、キスをしてきた。

満足な時間を過ごせた。Dは明らかに昨夜と反応が違った。やはり知らない相手より一度でも知っいる相手のほうが安心感があるのかもしれない。ただ一点、今日も変わらず胸を舐めるとタオルで拭き、また舐めるとタオルで拭き。まるで餅つきの杵と合いの手のような息の合った作業。もはやそんな感じだった。だが私も2度目となれば驚くこともない。まさにマイペンライである。充実の朝を迎えることができた。

ソンが寝静まり、私がベッドでウトウトとしていると、Dがタオルを巻いた姿でシャワーから出てきた。私の寝ているそばに腰を下ろして自分の腕や脚にスキンローションを塗り、昨日買ったベビーパウダーをかけている。お肌のケアは大事だ。

「D、お肌のケアでしょ? それならもう一度舐めてあげるぞ笑」

冗談でそう言うと、イヤそうな顔で、いらないと言われた。わかってるよ。冷たいやつだな。自分の冗談で傷ついてしまったではないか。

Dはこれから自分の部屋に戻って、少し寝てからコンケーンに帰ると言う。車で帰るようだが、一人で帰るわけではないようで、なにか説明をしてくれたが意味が分からなかった。

着替えの終わったDにチップを渡し、ホテルの下まで見送る。

彼女はホテルのそばでモタサイを見つけると、私にバイバイと言って帰って行った。

私はまた彼女に会えるのだろうか。2晩を一緒に過ごし、お互いに少し打ち解けたような気がした。だからもう会えないかもしれないと思うと、とても寂しかった。

また彼女に会いたい。

寂しさで気分が乗らず、今日はビーチの散歩をやめて部屋に戻った。

(次回に続く)