ゴーゴー嬢を助け出せ!

ゴーゴー嬢を助け出せ!

パタヤから帰国して1週間。帰国後最初の日曜日。我々は昼メシを食べに近所のレストランへ行った。そして話題は当然パタヤの話になった。

「次いつ行く?」

「え?行くの? つまんねぇって言ってたのに?」

私からも次のパタヤを誘うつもりではいたが、弟の方から先に話を切り出してきた。

「つまんないけど行く」

「は?なにそれ」

「で、いつ行ける?」

「日にち決めちゃえば、それに合わせるけど。」

「じゃあ、5月の連休明けは?飛行機調べたらすごく安いんだけど。」

「そうなの?じゃあ行こうよ、その辺で。てか行く気満々なの?笑」

「そう。つまんないけど笑」

こうして2度目のパタヤ旅行が決まった。前回から約4ヶ月後、我々は再びパタヤへ向けて旅立った。前回より1泊増やしての4泊5日。行きも帰りも前回同様の飛行機だがホテルはウォーキングストリートに近い方が便利ではないかとの思惑で別のホテルを予約していた。今回選んだのはベイウォークレジデンス。AGODA の日本人評価や値段、立地を検討して選んだ。所々に古さが目立ったが、とても開放的な雰囲気で良い。レストランが更に開放的で海を真正面に見下ろしながら食べる朝食は最高だった。

空港からのタクシーは順調に走り、予定よりも早い17時頃にホテルに到着した。ホテルにチェックインして、しばし休憩。シャワーを浴びてうたた寝。頃合いを見計らって出発。ウォーキングストリートに向かった。

相変わらずのネオンと喧騒。女の子たちの呼び込みの声を聞いて嬉しくなる。

…あーまた来れて良かった!…

今から4日間思いきり遊べる。2回目という経験値からか、最初にここを訪れた時とは心のゆとりが大きく違う。さて今宵はどこから攻めようか、などと余裕をかます。GINZAのNとBはまだいるだろうか?などと懐かしみつつウォーキングストリートを歩いていると誰かに掴まれる。見ると頭に猫耳を付けた女の子。FAHRENHEITの呼び込み嬢らしい。

…え、なんで猫耳!? でもちょっと可愛いぞ…

弟を見ると猫耳の友達らしきコに捕まっている。

「ちょっと入ってみる?」

「うん、いいよ」

猫耳に興味を惹かれたのもあるが、もしかしたら小アマゾンに会えるかもしれない、そう思った。前回小アマゾンとは連絡先の交換もせずに別れてしまったのでそれっきり。今もFAHRENHEITにいるかどうかはわからないがチャンスがあれば彼女にはもう一度会いたいと思っていた。

猫耳とその友達を引き連れてそのまま入店する。席に案内されて、まずは小アマゾンを探す。ステージにも待機している女の子達の中にも彼女は見当たらない。猫耳が元気に話掛けてくる。

諦めて猫耳に集中することにした。

「二人は似てるね」

そう猫耳が言った。

「そう?似てる?」

「目が同じ」

「そう、二人は兄弟だから」

日本ではあまり似てるとは言われない。黙っていればまず兄弟とは思われない。なのに猫耳は会ってすぐに似てると言うので驚いた。

「私達も姉妹!同じ!」

弟とじゃれ合っているコを指して言う。

「ホント?似てないよ」

…でた!兄弟姉妹ばかり説…

タイ人は関係がよく分からない兄弟姉妹が多いと、ネットで目にしていた。姉妹だと言ってはいるが、一体どんな姉妹なのだろうか。猫耳に聞いてみたがなんだかよく分からない。ヤクザな世界の”へいアニキ!おう兄弟!”的な事ですか?それとも”隣りのマユミお姉さんがユカちゃんを妹みたいに可愛いがる”的な事ですか?まあ、よろしい。そういうことなら4人で乾杯しようじゃないかとテキーラをオーダー。途端に仲良く打ち解けた。

弟の相手のコは大学生だと言う。猫耳も元気だがこの大学生も元気だ。弟もいくらかのタイ語を覚えてきたようで楽しんでいる。

1時間ほどして、一旦このバーを出ることに決めた。私も弟も相手のコを気に入っていたので、このまま飲んで盛り上がり今日は彼女達と帰ることも考えたが、まだ1軒目で時間も早い。もう少し他も探してみようということになった。

数件のバーをハシゴしてHAPPYに入店。正面の楕円形ステージの席に案内される。ドリンクをオーダーし、早速ステージに目を向ける。

…いた。しかも超可愛い…

「やばい、見つけちゃった」

「えー!もう!?」

「しかもちょ~可愛い」

「どのコ? あ、ちょっと待って。当てるから笑」

「あーわかった!あのコでしょ、ほら踊らないでボーっと突っ立てるコ」

「正解笑 どう?ちょー可愛くない?」

「わかるわかる笑」

清楚な若奥様系で美人。手足もすらっとしておりスタイル抜群。完全に私のタイプ。このコを選ばずして他の誰を選ぶのか。結果がどうであれ今日はあのコを連れて帰るぞ。そう思った。

まずは彼女の反応を見たいと思い、目を合わせようとする。だが、一向に目が合わない。ステージ上の彼女は踊るわけでもなく、ポールに捕まってゆらゆら揺れているだけ。お客を探したりアピールすることもなく、ただ一点をボーっと見つめている。どういうモチベーションでステージにいるのだろう。

「ねえ、目が合わない笑」

「避けられてんじゃね?笑」

「違うわっ!誰も見てないもん」

「じゃあ、番号で呼んじゃえば?」

「いや、それは照れる笑」

そんな話をしていると、彼女が突然ステージを降りた。

「あれ?いなくなった!どっか行っちゃったよー」

「あーあ。笑」

彼女を見失ったと思った矢先、また彼女が現れた。我々の真向かいに座る男性に呼ばれたようだった。日本人なのか中国人なのか韓国人なのか私には見分けがつかないが、脂ギッシュなオヤジの隣りに彼女が座った。

「やばっ!彼女取られちゃったよ!」

「モタモタしてるからだよ笑」

「いや、どうしたらいい?」

「わからん。もうダメじゃね」

弟の言う通り、もう手遅れかもしれない。だが彼女を見つけた以上どうしても諦められない。あの脂ギッシュが彼女をリリースするのを期待して待つしかないか。そう思って彼女の動向を観察する。しばらく彼女の様子を見ていると、希望の光が見えてきた。どうやら彼女は脂ギッシュを嫌がっているようだ。いや、どうやらではなく確実に嫌がっている。話をするわけでもなくベタベタと彼女を触る手から逃れようと必死になっている。

「ねえ、ちょっと見て。超嫌がってるから」

「ははっ ホントだ笑」

「早くあのオヤジから助けてあげないと」

「いや、こっちもオヤジですけど」

「こっちのオヤジは楽しいぞ作戦だな」

「他人の女に手を出すんじゃないよ笑」

「手を出すんじゃなくて、差し伸べるの!笑」

よし、今度こそ目を合わせてやる。妙な意気込みを察知したのか彼女がこちらを見た。すかさず笑顔で返し、小さくキスのジェスチャーをする。脂ギッシュに見られたらまずいのでおおっぴらには出来ない。オヤジのキスなんて脂ギッシュ同様に気持ち悪いが笑えるだけマシだ。思惑どおりに彼女が笑う。脂ギッシュにバレないよう小さく手招きをすると彼女もこっそりとこちらを見て笑う。

「うおー!たまらんぞ、この背徳感!笑」

アピールされる側の私が一生懸命彼女にアピールする。あとはリリースされるのを待つだけだ。脂ギッシュが仮にペイバーを望んでも、はい分かりましたと彼女が付いていくような気はしない。長期戦にならないことを祈るしかない。

早々に動きがあった。脂ギッシュがチェックをして店を出た。彼女をリリースしたのだった。考えてみれば当然で、触ろうとすると嫌がり喋りもせずにボーっとしてるコを選ぶなんてことはまず無い。解放された彼女は何処かに消え、また見失ってしまったが、これで向こうから来なければ諦めた方がいい。そう思ってしばらく彼女を待つ。

「来たー!!!」

「あ、来た笑」

何処から現れたのか突然我々の前に彼女が現れた。女の子が一緒に席に着く大抵の場合、サワディーカー!とかハローとか声を掛けてきたり、またはワイをするとかニコニコ嬉しそうに来るとか、そんなパターンだ。だが彼女は薄ら笑いで我々の前に立って何も言わない。何か独特の雰囲気のあるコだった。

私は大歓迎の気持ちを表しながら、私の隣りに席を空けた。彼女のドリンクオーダーを済ませて、彼女の動きを待ってみたが、やはり彼女からは何も発しない。こちらから話をすることにした。

「名前は何?」

「D」

「出身は何処?

「イサーン」

雰囲気が都会的な感じがしていたが、彼女もイサーン出身らしい。そんなことよりも、聞かれた事に答えるだけでかなり手強い。自分の名前を聞かれても私に名前を尋ねることはない。

「さっきのカスタマー、嫌がってたでしょ。見てたよ笑」

そう言うとまたニヤッとした。

「なに人?」

「チャイニーズ」

「チャイニーズは嫌い?」

「嫌い」

「なんで?」

「うるさい」

やはり聞いたことには答えるが、それだけでなかなか場が盛り上がらない。不安になって弟に確認する。

「なんも喋んないんだけど、まさかオレも嫌われてる感じ?」

「嫌なら来ないでしょ。がんばれ笑」

「いや、もう頑張れない。どう?誰か見つけた?」

「いない」

「どうする?他に行く?」

「うん、他探すわ」

「わかった。ちょっと待ってて」

私はこのDをどうするべきか悩んだが、彼女を選ぶことに決めた。このコを選んだ結果、強烈な塩対応にあう可能性は大である。だが顔もスタイルも私的には抜群。どうにも手放し難い。そもそも私は元気でニコニコしてるコよりもDの様なタイプに惹かれる事が多い。私はDに話掛けた。

「ロングタイムであなたをペイバー出来る?」

彼女は頷く。

「あなたのチップはいくら?」

「アップ トゥ ユー」

彼女の感じから”この金額じゃなきゃ私は行かない”くらいの事を予想していたが意外な返事だった。

「ロングタイム4,000Bでオッケー?」

「オッケー」

「今ペイバー代を払うから、着替えて1時間ぐらいここで待てる?彼のレディーを探して戻ってくる」

彼女はまた頷いた。

素直なのかどうでもいいのか、まったく掴み所がない。期待よりも不安が大きい。だが怖気付いてあとで後悔したくない。失敗しても今日はまだ初日だ。また楽しめばいい。

そう考えながら彼女をおいて店を出た。

(次回に続く)