タイ語を理解しよう!

タイ語を理解しよう!

「初めまして。元気ですか?」

「うん、元気です!」

「名前はなんと言いますか?」

「ヨシです」

「ヨキィ?」

「…そう」  またちょっと違うけどな笑…

彼女は英語で話し掛けてくる。近くで見ても可愛い。

一方、弟の素朴ちゃんはダンスの後ステージを降り、我々の前を通らず離れた席に座った。それを見て手招きして自分の席に呼んでいる。

…やるなぁ、弟よ…

小アマゾンは見た目の雰囲気とは違い優しくゆっくり話し掛けてくる。英語もままならない私に、話が通じなくても諦めずにゆっくり話してくれるのでなんとか会話が出来た。

いいコかもしれない。いや、もう疑いもせず彼女と帰ることに決めた。

「一緒にホテルに行ける?」

「うん!」

そう言って嬉しそうに腕を組んでくる。それが彼女の仕事なのだが、わかっていても嬉しい。

「ペイバー代はいくら?」

「1,000B」

「あなたのチップは?」

「ショートタイム?ロングタイム?」

「ショートタイム」

「2,500B ロングは4,000B」

…あれ?なんか安いぞ…

昨夜のB達が高かったのか、このコが安いのか分からないが、喜んで承諾。ロングにしようとも思ったが、とりあえずショートでペイバーを決めた。

「あなたのフレンドはどうするの?」

そう聞かれて弟に聞いてみる。

「オレ、このコに決めていい?」

「いいよ笑」

「お前はそのコどうする?」

「オレ?やばい。このコ英語喋れないみたいで全く話ができない笑」

「え、まじで?どうする?」

「このコでいい笑」

「え?話通じないのに?チャレンジャーだな」

英語も喋れないということはスレてないから良い、多分そう言う理屈だろう。確かにそうかもしれないけど、どうやって会話をするんだろうか?

とにかくこれでお互いに相手が決まった。彼女達が着替えてくるのを待って4人で店を出る。

少しお腹が空いていたので、小アマゾンに言う。

「お腹が空いたから、ご飯食べに行きたい」

「どこ?」

「パタヤは初めてだから店を知らない」

「日本料理?タイ料理?」

「タイ料理がいい」

「オッケー」

そう言って私の手を取り繋ぐ。迷子になるなよと言うことなのか。

…いや、そこまでしなくても。恥ずかしいんですけど。…

手を繋いで歩くなんて何年振りだろうか?少し恥ずかしくなって周囲を見渡すと、人種を問わず似たようなカップルが歩いている。それに、周りは誰も見ていないし気にもしていない。

少し離れて後ろを歩く弟を確認する。

…うわっ おまえもかいっ!…

素朴ちゃんと手を繋いで無言で歩いている。

小アマゾンは私の手を引き、素敵なレストランに連れて来てくれた。ウォーキングストリート入り口手前にある”Beer Garden”という店。いったいどんな怪しげな店に連れて行かれるのだろう…と一瞬思ったその先に、海に面した雰囲気の良いレストランがあった。

まさに海に面した席に案内される。最高に気分が良い。オーダーは彼女達に任せ、ビールで乾杯した。料理を待っている間、小アマゾンは誰かとラインのビデオ通話を始めた。まさかの携帯ちゃん再来か⁉︎と思ったが彼女は違った。ビデオ通話の相手に、いま日本人のカスタマーとご飯を食べに来たというような事を嬉しそうに話している。どんな日本人か見せろとでも言われたのか、私にも写れと言ってスマホを向けてくる。照れながら画面に映っている彼女の友達に手を振る。楽しい時間だ。ビデオ通話はともかく、彼女が楽しそうにしている事が嬉しかった。

まもなくオーダーした料理が運ばれてきた。彼女が一品づつ料理を取り分けてくれる。

「これは食べる?」

「うん、食べる」

「美味しい?」

「美味しい、美味しい」

「これも食べる?」

「それは辛い?」

「辛くないよ」

「じゃあ食べる・・・ってめっちゃ辛いじゃん!」

「辛くないよ!笑」

美味しいとか辛いとか、簡単なタイ語しかわからないがそれでも相手に通じると楽しい。素朴ちゃんも我々の使うタイ単語には反応してくれる。言葉が通じればもっと楽しいのかもしれないと思った。

料理はまだ少し残ってはいたが、そろそろホテルへ帰ろうということに。会計をすると合計約1,000B。弟と割り勘をすると500B。海辺のシチュエーションで料理の味もボリュームも満足。それでこの値段は安い。いろんな意味で身も心も満足のいく食事となった。

店を出て少し歩き、乗り合いのソンテウに乗る。

たしか昨日は訳も分からず、Nが交渉したチャーターソンテウでホテルまで帰ったが、今日は他の乗客も一緒だ。車内はまさに多国籍状態だった。我々と同じようなカップルもいる。私は小アマゾンに手を握られたままソンテウに座っている。誰も奇異な目で見たりしない。それはごく普段通りの風景だからだろう。パタヤが私達を普通の恋人同士のように扱ってくれている。すごい街だと思った。

ほどなくしてホテルに到着。弟ペアと別れて部屋に入る。

TVを点け、目的もなくチャンネルを変える。急に二人になって、なんだか落ち着かない。

彼女がニヤニヤしながら突然タイ語で話し掛けてきた。

「一緒にシャワーに行く?」

予想外なことを聞かれた。いや、タイ語なので分からないはずだが、雰囲気かゼスチャーなのか、そう言ったように理解した。

「イエス!イエス!」

そう返事をすると、彼女はその場で服を脱ぎ、シャワールームへ消えた。

…え?どっち?オレも一緒にいいの? てかなんで急にタイ語?…

自分の勘違いかもしれないと戸惑いながらも慌てて裸になってシャワールームへ入ると彼女は笑って迎えてくれた。どうやら正解だったようだ。

ちょっと冷たいシャワーを私に掛けながら体を洗ってくれる。

「あなたはタイ語が話せるの?笑」

「話せない」

英語で聞くのでそう答えると、ニコと笑って冷たいシャワーを私の顔に浴びせた。

…こいつ、さっきわざとタイ語で言ったな。。。…

楽しかった。この後彼女がどんな事務員とかマグロちゃんになろうとも、もうこのコに満足していた。

彼女との夜は最後まで楽しかった。

私がウトウトし始めた頃、彼女は起き上がってシャワーを浴びに行った。

服を着終わるのを待って約束のチップを渡す。彼女はありがとうと言って、金額を確認もせずにそのままバッグにしまった。タクシー代が欲しいとは言わなかったが、感謝の意味で200Bをタクシー代と言って渡した。

帰る彼女を部屋のドア越しに見送り、バイバイをする。昨日の別れとは全く違う寂しさを感じた。

…ああ、これがキトゥンだな…

(次回に続く)